日本語組版におけるダッシュ記号

日本語組版において「ダーシ」「ダッシュ」と呼ばれる横棒(特に二倍ダーシ)には複数のUnicodeコードポイントが存在し、それぞれ禁則処理やフォントレンダリングの挙動が異なる。再審法改正のような文書(特に縦組みの小説や法律文書)で正しく扱うには、これらの差異を理解する必要がある。

主要なコードポイント

コードポイント名称用途禁則状況
U+002DHYPHEN-MINUSレガシー、意味的に曖昧
U+2010HYPHEN単語のハイフネーション
U+2013EN DASH範囲(例: 1973–1984)
U+2014EM DASH (―)文の流れの中断・ダッシュ1強い禁則で行頭禁則文字に登録済み2
U+2015HORIZONTAL BAR (―)日本語の二倍ダーシに最適プリセットの弱い禁則では未登録だが、情報パネルでは分離禁止文字扱い
U+2500BOX DRAWING LIGHT HORIZONTAL (─)罫線素片禁則未登録、その他の和字扱い
U+2E3ATWO-EM DASH (⸺)中国語の破折号

二倍ダーシの実現方法

日本語組版での2倍ダーシとしては、U+2015(HORIZONTAL BAR)を文字送り方向に200%に拡大して使用するのが最も適切である3。DTPソフト(InDesignなど)で設定可能であり、源ノ角ゴシックを代用する場合はGSUB機能により適切な字形に自動置き換えされる(3字分まで対応)4

U+2014(EM DASH)はプリセットの「強い禁則」では行頭禁則文字に登録済みだが、フォントによって位置も長さも異なるため、一律の拡大による二倍ダーシの実現には向かない。

U+2500(BOX DRAWING LIGHT HORIZONTAL)は天地センターにあり長さも1字分丁度で一見便利だが、「分離禁止文字」に未登録であるため行長調整のアキが割り振られる可能性があり、また「その他の和字」扱いのため欧文・英数字との間に和欧文間隔(四分アキ)が発生する5。これらの問題は禁則処理セットのカスタマイズや「文字組みアキ量設定」の調整で回避可能であり、登録さえすれば行長調整のアキは割り振られなくなる6

分割禁止文字シーケンス (JLReq)

W3C JLReq(日本語組版要件)では、以下の連続を分割禁止と規定している7

  • 連続するEM DASHまたはHORIZONTAL BAR(――、――)
  • 連続するリーダー/二点リーダー(……、‥‥)
  • 欧文数字列
  • 前置き/後置き記号+数字
  • 欧文単語内(ハイフン位置を除く)
  • ルビ内、親文字と添字間、参照記号前・内

Unicode標準上の分類

Unicode 17.0.0 (Chapter 6, Table 6-3) では、U+2014 (EM DASH) とU+2015 (HORIZONTAL BAR) は別個の文字として定義されている8。日本語の二倍ダーシはU+2015が正式に対応するが、実際のフォント実装では混在・混同が見られる。

関連項目

参考文献

Footnotes

  1. Unicode 17.0.0, Table 6-3 のエントリ「U+2014 — EM DASH」。「is used to make a break—like this—in the flow of a sentence」より。

  2. InDesignで組む2倍ダーシ「U+2014がプリセットの「強い禁則」の「行頭禁則文字」に登録されている」

  3. InDesignで組む2倍ダーシ「U+2015を使用して、(文字送り方向に)200%として2倍ダーシを実現」

  4. InDesignで組む2倍ダーシ「源ノ角ゴシックを代用することも可能…GSUBの機能によって適切な字形に自動的に置き換えてくれる:3字分まで対応」

  5. InDesignで組む2倍ダーシ「U+2500には、欧文/英数字との間に「和欧文間隔」が発生する…プリセットのアキ量設定では四分アキ」

  6. InDesignで組む2倍ダーシ「U+2500も登録さえすれば行長調整のアキは割り振られることはないでしょう」

  7. JLReq, 3.1.10 Unbreakable Character Sequences.

  8. Unicode 17.0.0, Table 6-3。U+2014「EM DASH」とU+2015「HORIZONTAL BAR」は別エントリとして定義。